【Foresightインタビュー】サントリーホールディングス社長・新浪剛史氏

「グッド・カンパニー」は「自然資本」を次世代に引き継ぐ競争から生まれる

執筆者:2021年6月16日
写真=坪田充晃(新潮社写真部)

――コロナ禍に対する緊急対応の時期を経て、新たな経済成長戦略を描く必要性が高まっています。気候変動問題など資本主義経済が積み残してきた課題への対応も、具体的なタイムスケジュールの中での取り組みが迫られます。これからの国内外の経済状況と企業の役割をどのように捉えますか。

 足元の国内経済は二極化しています。外需がけん引し、重厚長大の企業は好調ですが、非正規雇用の多いサービス業は冷え込んでいます。休業手当を支払う企業を支援する雇用調整助成金で下支えをしていますが、家計の預貯金は先行きの不透明感を背景に増えていて、個人消費も低迷しています。米国と比べ際立つのが消費者のマインドの違いです。米国でも家計の預貯金は増えていますが、日本よりもプレミアムな商品に支出する傾向が強いのが特徴です。国内総生産(GDP)の6割近くを占める個人消費が持ち直さないと、景気の回復は難しいでしょう。

 しかし、新型コロナウイルスのワクチン接種の加速で状況は変わると見ています。個人消費は、リモートワークの定着などで、コロナ禍前の水準に戻すのは難しいが、8割ほどに持ち直すはずです。消費の場が、繁華街など中心部から自宅や自宅周辺にシフトしていくためです。加えて、その際に期待できるのは国内旅行への支出です。新型コロナの感染拡大で持ち越されてきた旅行需要が大きく回復する可能性があります。もちろん、新たな変異株の拡大などは予想しづらいですが、早くて今年9月ごろに反転の兆しを見せ、クリスマスに大きな波を迎えるというのが個人消費の回復シナリオでしょう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。