ナイジェリアでは圧政に対する抗議デモが広がっている(C)AFP=時事

 

 ナイジェリア政府が6月4日、国内でのツイッターの使用を禁止すると発表した。「(ツイッターが)宗教、人種差別、排斥主義やニセの情報を拡散している」ことが停止の理由だという。司法省は違反者を起訴する考えを明らかにしている。

 ナイジェリアはアフリカで最大の人口と経済規模を擁し、ツイッター利用者は国民のおよそ5人に1人に当たる約4000万人と推計され、禁止措置の影響は甚大である。米国の国務省は10日、ナイジェリア政府に対し、表現の自由に関する国民の権利を尊重して禁止措置を撤回するよう求める声明を発表した。

 ツイッター禁止に至るまでの経緯を辿っていくと、コロナ禍のナイジェリアで、感染拡大阻止の大義名分の下で治安機関による暴力が深刻化してきた事実に行き着く。

 本稿では、ナイジェリアを含むコロナ禍のアフリカ諸国で増加した、国家権力による暴力と抑圧の問題を見ていきたい。

当初の予想ほど拡大しなかった新型コロナ

 新型コロナ感染が拡大し始めた当初、医療水準の低いアフリカでは深刻な感染爆発が起きると予想されていた。2020年4月17日に国連アフリカ経済委員会が発表した報告書では、アフリカにおける新型コロナ感染症の死者は30万人、最悪の場合330万人に達すると予測されていた。

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