ヤンゴンでの反政府活動は下火になったようにも見えるが、先は見えない (C)AFP=時事

 ミャンマー情勢に好転の兆しが見えない。「全面的内戦の恐れがある」と言うのは、誇張だ。ただし、多くの識者が「失敗国家」といった概念を用いてミャンマー情勢を描写しているように、事態は深刻だ。

 その背景には、ミャンマー国軍の「恐怖による支配」というべき姿勢がある。恐怖支配で危機を作り出している張本人が、危機があるから恐怖政治が必要だ、と主張し、権力と利権を独占しているのだ。

 この状況に直面して、日本にできることは限られている。「日本独自の外交」といったその場限りの脚色をしても、「パイプ」がミャンマー国軍の態度を変えるほどに機能することは起こりそうにない。

 5000億円の債務取り消しを行った後、なお毎年1000億円以上の規模で提供し続けた円借款中心のODA(政府開発援助)は、高額事業の契約主体が日本企業群であることを考えると、簡単には停止できないだろう。

 国軍に忖度しなければミャンマーを中国に依存させるだけだ、という言説も根深い。しかし日本の約3倍のGDP(国内総生産)を持つ超大国・中国と、その隣国においてクーデター後もお金を提供する競争を続けようというのは、あまりに危険な考えである。

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