「平和構築」最前線を考える (27)

巧妙に続くミャンマー国軍「恐怖支配」に日本が果たすべき「責任」

執筆者:篠田英朗 2021年6月24日
タグ: 日本 中国 紛争
エリア: アジア
ヤンゴンでの反政府活動は下火になったようにも見えるが、先は見えない (C)AFP=時事
自作自演で混乱と危機を作り出し、それを“収拾する体制”として恐怖政治を正当化する――半世紀以上も続く国軍の手法は揺るぎを見せない。人道援助団体への襲撃も頻発する中、日本は標的制裁と援助の両立可能性を研究すべきだ。

 ミャンマー情勢に好転の兆しが見えない。「全面的内戦の恐れがある」と言うのは、誇張だ。ただし、多くの識者が「失敗国家」といった概念を用いてミャンマー情勢を描写しているように、事態は深刻だ。

 その背景には、ミャンマー国軍の「恐怖による支配」というべき姿勢がある。恐怖支配で危機を作り出している張本人が、危機があるから恐怖政治が必要だ、と主張し、権力と利権を独占しているのだ。

 この状況に直面して、日本にできることは限られている。「日本独自の外交」といったその場限りの脚色をしても、「パイプ」がミャンマー国軍の態度を変えるほどに機能することは起こりそうにない。

カテゴリ: 軍事・防衛 政治 社会
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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