新型コロナウイルスへのワクチンが各国の内政や、外交・覇権競争の主要課題となっている現在である。ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社、ジョンソン&ジョンソン社などの欧米系の巨大製薬企業がそれぞれの製品を競い、mRNAをはじめとする最先端技術の迅速な応用が進められ、ロシア・プーチン大統領肝煎りのスプートニクVや、中国のシノファーム(医薬集団総公司; Sinopharm)やシノバック(科興控股生物技術; Sinovac)によるワクチンの有効性や外交的な利用について甲論乙駁があり、食傷気味になるほど情報や議論が流れ飛ぶ。「一億総ワクチン評論家」の現象に加わりたくはないのだが、脇道の若干の感想を一言。

6月25日、イランの最高指導者ハメネイ師が、イランの国営企業による独自開発のワクチン(COVIran Barekat)を接種したとする様子が、大々的に報じられた。

イランは新型コロナウイルス(COVID-19)の伝播によって早期に大規模な感染爆発に見舞われた国であり、感染状況は改善しないまま推移している。これまでに新型コロナ禍により8万3000人が死亡したとされる。

イランは米国による経済制裁下にあり、ファイザー社やモデルナ社など世界最先端のワクチンの大規模購入・接種は難しい。米国の制裁は食糧や医薬品などは除外されるはずであるが、包括的に運用されている米の金融制裁はイランとの取引一般を強く制約している。

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