外務次官に就任した森健良氏(C)AFP=時事

 

 戦後最長の3年半もの間外務次官を務めていた秋葉剛男氏(1982年入省)が退任し、後任に日米関係のエキスパートである森健良外務審議官(83年入省)が就任した。秋葉氏は、外交や安全保障政策の司令塔となる国家安全保障局(NSC)の局長となる方向だ。すべては外務省の青写真通りの人事で、菅義偉首相が同省の意向をそのまま受け入れたと言える。経済産業省など他省庁が外交に幅を利かせた安倍晋三前政権時代から一変し、本丸の外務省が復権した状況が浮き彫りになった。

「昨今、国際情勢の変化するスピードは激しく、この流れは一層速くなっていく。日本の置かれた環境が大きく変わる危機が起きる可能性があり、そういう事態に立ち向かう覚悟を持ってほしい。他方、日本の国益を考えたときには、国際社会での名誉も大事だ。名誉を追求する外務省でもありたい」

 森氏は6月下旬、外務省で開かれた新旧事務次官の交代式でこう訓示し、激変する国際環境に対応できる機動力を身に着けるよう檄を飛ばした。

 森氏は北米第一課長や駐米公使、北米局長などを歴任し、米国の民主、共和両党の関係者と太いパイプを持つことで知られる。バラク・オバマ米政権が主導したTPP(環太平洋経済連携協定)交渉に一貫して携わり、2013年には経済外交担当大使として、自動車の関税や安全性能基準など、日米協議で最も難しい問題にも向き合った。

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