6月には中東政治の今後の起点となる重要な事象が複数生じた。そのうち二つを挙げれば、一つはイスラエルでのネタニヤフ首相退陣・ベネット=ラピド政権発足であり、もう一つはイラン大統領選挙でのライースィー候補の勝利である。

いずれも大きな事象で、月が改まる前に「中東通信」でまとめておきたいと思いつつ、それが「起点」であるため、そこから展開する事象の可能性に幅があり、書きあぐねるうちに日が過ぎた。いくつかの要点のみメモしておこう。

まず、イスラエルのネタニヤフ退陣と新政権発足である。

6月2日の深夜に、中道政党「イェシュ・アティド」のヤイル・ラピド党首が、右派政党「ヤミナ」のナフタリ・ベネット党首を始めとする幅広い諸政党の代表と、連立合意に成功し、これに基づき、6月13日に国会(クネセット)で信任され、正式に8党による連立政権(第36代内閣)が発足した。

最大野党(イスラエル国会120議席のうち17議席)のイェシュ・アティドの党首として組閣の大命を下されていたラピドは、わずか7議席のヤミナのベネット党首に当面の首相職を譲り、ラピドは外相に就任。2023年8月27日に首相職をベネットから受け継ぐ協定である。

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