トップでゴールした選手が疑惑の目にさらされている。といっても、スポーツの話ではなく、アルツハイマー病に対する世界初の根本治療薬として6月8日に米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた「アデュカヌマブ」(商品名アデュヘルム)のことである。
医薬品開発のレース中から、アデュカヌマブはいわくつきのトップランナーだった。快調なスタートを切ったかと思えば、途中でレースから脱落し、そうかと思えば異例の復活を遂げ、そのまますんなりゴールするかと見えたが、終盤で、外野の審判から「ゴールを認めてはならない」と物言いが付いている状況の中、ゴールテープを切ったのである。
筆者は、今年2月に上梓した『認知症の新しい常識』(新潮新書)の「おわりに」に、「(刊行後にアデュカヌマブの承認の可否がはっきりした時)人々は世界初のアルツハイマー病に対する治療薬が誕生して大喜びしているかもしれないし、逆に、またもやダメだったとがっくりしているのかもしれない」と書いた。
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