世界初の認知症治療薬「アデュカヌマブ」の功罪(前編)

綱渡りだった承認の舞台裏

執筆者:緑慎也 2021年7月4日
タグ: アメリカ 日本
エリア: その他
米食品医薬品局(FDA)が承認したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」 (製品名アデュヘルム)[エーザイ提供] ©時事
米製薬大手バイオジェンと日本のエーザイが開発した「アデュカヌマブ」が、米国の食品医薬品局(FDA)の承認を受けた。世界初のアルツハイマー病の治療薬の誕生である。このニュースを受けて一時はエーザイの株価が高騰したが、今回の承認がバラ色の未来を約束しているわけではないという。「アデュカヌマブ」の開発時から取材を続けてきた科学ライターが、その功罪についてリポートする。

 トップでゴールした選手が疑惑の目にさらされている。といっても、スポーツの話ではなく、アルツハイマー病に対する世界初の根本治療薬として6月8日に米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた「アデュカヌマブ」(商品名アデュヘルム)のことである。

 医薬品開発のレース中から、アデュカヌマブはいわくつきのトップランナーだった。快調なスタートを切ったかと思えば、途中でレースから脱落し、そうかと思えば異例の復活を遂げ、そのまますんなりゴールするかと見えたが、終盤で、外野の審判から「ゴールを認めてはならない」と物言いが付いている状況の中、ゴールテープを切ったのである。

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執筆者プロフィール
緑慎也(みどりしんや) 1976(昭和51)年大阪府生まれ。科学ライター。出版社勤務後、月刊誌記者を経てフリーに。科学技術を中心に取材・執筆活動を続ける。著書に『消えた伝説のサル ベンツ』、『認知症の新しい常識』、共著に『ウイルス大感染時代』『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』など。
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