中小企業向け法人減税をめぐって、主計局長時代の矢野氏は経済産業省とバトルを繰り広げた

 財務省の事務次官に矢野康治主計局長(1985年入省)が昇格した。菅義偉首相が官房長官時代に秘書官を務め、首相の信任が厚いとされる。霞が関では安倍政権以降、この10年、忖度やごますりがまかり通ってきた。この官僚社会の中にあって、矢野氏は菅首相に当時からはっきりと直言してきた。官僚に対する辛口のコメントで知られるテレビ朝日の「モーニングショー」のコメンテーター・玉川徹氏も「矢野氏は改革派」と認め、一目を置く存在だ。「異色」の事務次官が財務省のトップに立った。

 歴代の事務次官経験者には東大卒が多いが、矢野氏は一橋大学卒で、同大出身の同省事務次官は初めてだ。巨額の累積赤字を抱える中で、財政出動が続く。コロナ禍からの脱却という難題を抱え、矢野氏は嵐の中の船出になる。

 同省の事務次官は、主計局次長→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官と上がっていくケースが王道とされる。特に最終の「主計局長→事務次官」は既定コースだ。前任の太田充氏(1983年入省)は、主税局審議官→主計局次長→総括審議官→理財局長→主計局長→事務次官と、ほぼ王道コースを歩んでいる。

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