連載小説:裂けた明日 第13回

執筆者:佐々木譲2021年7月24日
写真提供:Metro Nashville Police Department/AFP=時事

高速バスに乗った直後、外から爆発音が響く。車内の客は騒然となるが――。

[承前]

 乗客の全員が立ち上がり、リアウィンドウごしに後方を見ていた。信也も立ち上がった。

 あの商業ビルの、セール中と書かれていた大きなガラス窓のあたりで爆発があったようだ。ビルの内側での爆発だ。煙がまだあたりにただよっている。道路では車が一台ひっくり返り、反対側の車線では二台が衝突していた。そのうちの一台は爆風でガラス窓の真ん前から吹き飛ばされたのだろう。路面には細かな瓦礫が散らばっていた。倒れているひとが、三人か四人いる。もし三十秒遅くロータリーを出ていたら、このバスも爆弾で穴だらけになっていただろう。へたをしたら、吹き飛んで転がっていたかもしれない。

 バスが現場から離れ、様子がよく見えなくなったところで、信也はまた席に腰を下ろした。ひとつ前の席から真智が見つめてくる。何があったんですか?と訊いている顔だ。

 信也は見つめ返した。爆弾テロ、以外の答があるのだろうか?

 由奈もそのひとつ斜め前の席から振り返り、母親と信也を見つめている。顔がひきつっていた。

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