聖林寺十一面観音と三輪山信仰の謎

執筆者:関裕二2021年7月23日
山そのものがご神体の三輪山(筆者撮影、以下同)

 2021年6月22日(火)から9月12日(日)にかけて、東京国立博物館で、特別展「国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ」が開かれている。

 白洲正子も「世の中にこんな美しいものがあるのかと、私はただ茫然とみとれていた」(白洲信哉編『白洲正子 祈りの道』新潮社とんぼの本)と絶賛するほどの、日本を代表する仏像だ。

十一面観音菩薩立像がもともと安置されていた、大御輪寺跡(現在は大田田根子・大神神社若宮)

 今は聖林寺(奈良県桜井市)に祀られる国宝十一面観音菩薩立像だが、もともとは三輪山麓の大神[おおみわ]神社の神宮寺「大御輪寺[だいごりんじ]」に安置されていた。明治の廃仏毀釈の難から逃れるために、縁のある聖林寺に移された。

 今回の特別展が「三輪山信仰」を意識していることも、興味深い。三輪山の禁足地の貴重な出土品も展示されている。三輪山は、仏教伝来以前から続く信仰の山だ。東博のホームページには、古い神社には建造物がなかったこと、山、滝、樹木などに神が宿ると信じられていたことが記されている。

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