国際人のための日本古代史 (137)

聖林寺十一面観音と三輪山信仰の謎

執筆者:関裕二 2021年7月23日
タグ: 日本
エリア: アジア
山そのものがご神体の三輪山(筆者撮影、以下同)
古来よりの三輪山信仰は、単なる自然崇拝ではない。なぜここに大物主神が祀られたのか。朝廷の祭祀はなぜ三輪山から伊勢に移ったのか。そこには藤原氏の正統性が関係していた――。

 2021年6月22日(火)から9月12日(日)にかけて、東京国立博物館で、特別展「国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ」が開かれている。

 白洲正子も「世の中にこんな美しいものがあるのかと、私はただ茫然とみとれていた」(白洲信哉編『白洲正子 祈りの道』新潮社とんぼの本)と絶賛するほどの、日本を代表する仏像だ。

十一面観音菩薩立像がもともと安置されていた、大御輪寺跡(現在は大田田根子・大神神社若宮)

 今は聖林寺(奈良県桜井市)に祀られる国宝十一面観音菩薩立像だが、もともとは三輪山麓の大神[おおみわ]神社の神宮寺「大御輪寺[だいごりんじ]」に安置されていた。明治の廃仏毀釈の難から逃れるために、縁のある聖林寺に移された。

カテゴリ: カルチャー 社会
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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