国際人のための日本古代史 (151)

スサノヲ篇(14)ヤマト建国に貢献しながらいじめられた「出雲」

執筆者:関裕二 2022年10月30日
タグ: 日本
エリア: アジア
西谷墳丘墓群(島根県出雲市)の四隅突出型墳丘墓(筆者撮影)
最後は「国譲り」で終わる出雲神話。だが、考古学の成果からこれを史実と照らし合わせた時、度重なる出雲への干渉が浮かび上がってくる。出雲はヤマトにいじめられていたのだ――。

 スサノヲの正体を明かす上で、「出雲神話」は欠かせないヒントのひとつだ。

 天上界を追放されたスサノヲは、出雲の簸川[ひのかわ]の川上に舞い下り、八岐大蛇を退治した。このあと出雲建国の基礎を築いたスサノヲは、婿(あるいは子か末裔)の大己貴神[おおなむちのかみ](大国主神)に後事を託し、根の国に去って行く。

遺跡の発掘が出雲の存在を確かにした

 出雲の国造りがほぼ終わると、天上界の天照大神らは、地上界を支配しようと企てる。出雲に神々を送り込み、乗っ取り工作を始めたのだ。出雲国造家[こくそうけ]の祖神・天穂日命[あまのほひのみこと]もそのひとりだったが、この神は出雲の神々に同化して天上界に復命してこなかった。そこで切り札として送り込まれた経津主神[ふつぬしのかみ]と武甕槌神[たけみかずちのかみ]が大己貴神に詰め寄ると「子の事代主神[ことしろぬしのかみ]に判断を委ねる」との言質を得て、その事代主神は、国譲りを承諾して海に沈んでいった。こうして、出雲の国譲りは終わった。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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