国際人のための日本古代史 (149)

スサノヲ篇(12)抹消された「天皇家の祖・スサノヲ」

執筆者:関裕二 2022年9月4日
タグ: 日本
エリア: アジア
五十鈴川(写真)のほとりに、アマテラスを祀る伊勢神宮内宮がある(筆者撮影)
太陽神アマテラスを皇祖神と定める『日本書紀』だが、その中に孕む矛盾を解いていくと、天皇家の祖がスサノヲであることを意図的に抹消したのではないか、という疑いが浮上してくる。

 多神教世界の神は、暴れ回る力が強いほど尊ばれた。丁重に祀れば、恵みをもたらす神に裏返ると信じられていたからだ。この理屈から言えば、スサノヲ(素戔嗚尊)は日本最強の神として称えられるべきだったが、神話の中で簑笠を着せられ、蔑まれた。これは、スサノヲが8世紀の朝廷の政敵だったことを暗示している。スサノヲは、単純な架空の存在ではない。それどころか、ヤマトの王家の祖神の誕生に、深くかかわっていたようなのだ。

天皇家の祖神を生んだスサノヲ

 天皇家の祖神はアマテラス(天照大神)とスサノヲの誓約[うけい](誓いを立てて神意を占うこと)で生まれた。経過は以下の通り。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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