日本での報道も増えた中国の「寝そべり」主義だが、現地の若者たちはあくまでライフスタイルの一種としてとらえている(写真はイメージです)。©AFP=時事

 4月17日、中国の大手サーチエンジンであるバイドゥの電子掲示板サイト「貼吧」にて、「躺平即是正義」(寝そべりは正義だ)というスレッドが立ち上がった。スレッドを立ち上げたユーザーは、自身の経験をもとに「2年以上仕事をせずに、遊びほうけている。(寝そべっていることは)別に間違いではない。プレッシャーは全て他人との比較や、先人から受け継ぐ伝統的観念によって生じるもの――人間はそうあってはならない」と語った。

 それから、「躺平主義」(寝そべり主義)という言葉は瞬く間に若者を中心に拡散され、中国の大手SNS「ウェイボー」でも寝そべりに関する話題のスレッドはPV(ページビュー)数が2,500万を超えている。日本でも報道が相次いでおり、寝そべりが中国で社会現象化しているという記事も見受けられる。しかし、その実態は報道と大きく乖離を生む状況に陥っている。

まず理解が必要なのは「内巻」という概念

 寝そべりの実態を解説する前に、まずは「内巻」を説明したい。「内巻」の由来は社会学用語である「Involution」で、「限られた資源のもと、外部の資源に頼ることができず、内的に複雑化し発展を遂げる」という意味合いを持つ。転じて、現在、中国では激化している社会競争の中で、たゆまない自助努力でひたすら自分を磨き続けることが礼賛されており、その度合いが年々苛烈になっている様子を表す言葉として使われている。

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