ライーシ新大統領(写真)の外交手腕は最高指導者・ハメネイ師に縛られるのか (C)EPA=時事

 2021年1月にバイデン政権が誕生したことで、トランプ前政権の様々な外交政策を変更し、「脱トランプ化」を進めるのではないかと期待されていた。

 実際、ジョー・バイデン大統領が就任すると、ドナルド・トランプ前大統領が主張していたWHO(世界保健機関)からの離脱を撤回し、NATO(北大西洋条約機構)諸国との関係も改善に向かっていった。そうした流れの中でバイデン大統領は、選挙公約のトップに掲げられたイラン核合意への復帰も早々に実現するのではないかと思われていた。

 しかし、バイデン政権はイラン核合意を再開させるための交渉を始めてみたものの、イランとの間での隔たりは大きく、現時点でも交渉はまとまっていない。

 2015年のイラン核合意の当事者であったハサン・ロウハニ大統領は2021年8月に任期が切れることになっており、憲法上再選されえないため、6月に大統領選挙が行われたが、そこで選出されたエブラヒム・ライーシが8月3日に大統領に就任することになる。

 穏健派で西洋的な価値にも理解を示し、合理的な政治判断を行うロウハニ大統領に対し、保守派の代表的な存在であるライーシが大統領になることで、これまでのようにアメリカとイランが交渉できなくなるのではないか、イラン核合意の再開は実現しないのではないかという懸念も高まっている。本稿では、ライーシ政権において、イラン核合意再開の交渉がどうなるのか、その結果、どのような中東秩序、世界秩序となるのかを検討してみたい。

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