ライーシ新政権の「イラン核合意再開」交渉に柔軟性は期待できない

執筆者:鈴木一人 2021年8月3日
エリア: 中東 北米
ライーシ新大統領(写真)の外交手腕は最高指導者・ハメネイ師に縛られるのか (C)EPA=時事
ライ―シ新大統領の外交には、最高指導者ハメネイ師の対米強硬姿勢がさらに直接的に反映される。核合意再開への交渉自体は継続されても、合意は遠のく可能性が高い。日本は交渉が頓挫した場合のリスクを見据えてイランにコミットする必要がある。

 2021年1月にバイデン政権が誕生したことで、トランプ前政権の様々な外交政策を変更し、「脱トランプ化」を進めるのではないかと期待されていた。

 実際、ジョー・バイデン大統領が就任すると、ドナルド・トランプ前大統領が主張していたWHO(世界保健機関)からの離脱を撤回し、NATO(北大西洋条約機構)諸国との関係も改善に向かっていった。そうした流れの中でバイデン大統領は、選挙公約のトップに掲げられたイラン核合意への復帰も早々に実現するのではないかと思われていた。

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執筆者プロフィール
鈴木一人(すずきかずと) すずき・かずと 東京大学公共政策大学院教授 国際文化会館「地経学研究所(IOG)」所長。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授、北海道大学公共政策大学院教授を経て、2020年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、編・共著に『米中の経済安全保障戦略』『バイデンのアメリカ』『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』『ウクライナ戦争と米中対立』など多数。
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