「ポストコロナの財政」で火花を散らす財務省vs.経産省

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執筆者:鷲尾香一2021年8月3日
「成長分野への大規模な財政支出」が欧米のトレンドなのは確かだが(経済産業省「経済産業政策の新機軸」より)

 ポストコロナを見据えた財政政策のあり方について、財務省と経済産業省が火花を散らしている。財政の健全化を強く主張する財務省に対して、経産省は大規模・長期・計画的な財政出動を主張し、真っ向から対立している。

 先手を打ったのは財務省だった。5月21日の財政制度審議会(財務相の諮問機関)で「財政健全化に向けた建議」を発表した。

 同建議では、財政健全化の必要性について、①低金利下で国債増発のコストを感じにくいが、悪化した財政状況は、将来への負担先送りのみならず、現時点でもコストやリスクに大きな問題を抱えている、②社会保障の受益と負担の不均衡は、現役世代の保険料負担の増加や将来不安に伴う消費の抑制を通じて、経済を下押しする、③新型コロナ対応による短期国債の大幅な増発は、市中発行額の高止まり、金利変動に対する脆弱性をもたらしている、④公債等残高対GDP比については、成長実現ケースでも、金利が成長率をわずかでも上回れば上昇する。また、PB(プライマリーバランス)の赤字幅が大きいと、成長率が金利を上回る場合でも上昇する。さらに、(中長期の財政試算の)成長実現ケースに達さないリスクがあることも認識する必要がある――と分析した。

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