尖閣・魚釣島周辺を巡航する海上保安庁の巡視船 ©時事

 

 今年1月、中国において成立した『海警法』を受け、わが国においても主に尖閣諸島をめぐる日中間の緊張激化を想定して、新たな法整備を模索する動きが出ている。自民党は4月までにかなりの議論を行ったが、国防部会と国土交通部会が対立したため、新たな法整備は結局断念した。一方、今年6月、複数の野党が閉会間際の第204回通常国会にそれぞれ法案を提出した。立憲民主党の『領域警備・海上保安体制強化法案』と、国民民主党と日本維新の会が共同提案した『領域警備強化法案』である。

 各法案の詳細については各党のHP(※立民国民)で確認いただきたいのだが、いずれの法案も、主として海上保安庁が所掌する「平時の任務」から、状況がエスカレートして自衛隊が出動する「有事の任務」に移行するまでの間、いわゆる「グレーゾーン事態」を念頭に置いている。

 筆者が見たところ、各法案の核心部分は次の3点と思われる。すなわち、立民及び国民・維新法案ともに、自衛隊法改正により海上自衛隊に「警戒監視の措置」の新任務を付与し、その際国民・維新法案では自衛官に「自己保存のための武器使用」を許可する(立民法案ではなし)(Ⅰ)、立民法案においては、自衛隊法を改正して海上自衛隊に「海上警備準備行動」なる新任務を付与する(Ⅱ)。さらに国民・維新法案は、海上保安庁法を改正して海上保安庁の任務として「領海の警備」「外国船舶の無害通航でない航行への対処」を明記する(Ⅲ)、というものである。

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