松﨑暁・現社長(左)は代表権のない副会長に。米国事業の立て直しも、堂前宣夫新社長(右)の使命になる ⓒ時事

 生活雑貨や衣料品、食品などを手掛ける「無印良品」(社名は良品計画)の社長に、ファーストリテイリングの元役員だった堂前宣夫氏(どうまえ・のぶお=現・良品計画専務=52)が9月1日に就任する。日本最大級の流通グループだったセゾングループから産み落とされ、約40年の歴史のある「MUJI」。業績好調の中での初の外部出身者の社長起用に、社内の一部からは「堂前さんは、『MIJIらしさ』をどうしようとしているのか」との動揺が広がっている。

 今回の人事の異様さは、現社長の松﨑暁氏(67)が代表権のない副会長になることにも表れている。会長の金井政明氏(63)は代表権を持ったまま。関係者によれば、今回の人事も金井氏主導で進められたという。海外事業を長く担当した「国際派」の松﨑氏だったが、昨年、米国法人の法的整理を余儀なくされた。グローバル化を目指すMUJIにとって世界の拠点になる米国での蹉跌が、松崎氏の事実上の更迭の一因と言われる。

 一方の堂前新社長は、ファーストリテイリング時代に米国事業の責任者を務めており、捲土重来が期待されている。だが、MUJIはセゾングループが源流なだけに、感性を重んじる社風がある。それを関係者は「MUJIらしさ」と呼ぶが、東京大学大学院を修了し、マッキンゼーを経てファーストリテイリングに入社した堂前氏には、これまで「内務官僚的」との評価がついてまわった。どこまでMUJIを理解しているか未知数だという懸念の声は、同氏が新天地で向き合う課題の一端を示していよう。

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