中東で、10年、そして20年単位の歴史の節目というべき事象が相次いでいる。

「10年」というのは「アラブの春」からの10年である。「アラブの春」の長期的・大規模な変動の口火を切り、唯一の民主化の成功例とされてきたチュニジアで、7月25日、カイス・サイード大統領が、緊急事態における大統領の特別措置を根拠に、首相の解任と議会(国民代表議会)の活動停止を宣言。議員の免責特権の剥奪も発表した。大統領は憲法第80条の規定に則ったと主張しており、これが民主主義的制度から逸脱するクーデタであるかどうか、また、エジプトで2013年に起こったような軍・治安機構の権力奪取につながる動きであるかは、まだ確たる判断がつきにくいが、民主化運動としての「アラブの春」の最後の砦が揺らいだことは確かだろう。

そして「20年」は、いうまでもなく9・11事件に端を発した「対テロ戦争」の開始からの20年である。アフガニスタンのターリバーン政権を打倒し、アル=カーイダと9・11事件の首謀者を捕縛するという目的で米国が踏み切ったアフガニスタン介入が、20年を経て、米国の最長の戦争と長らく呼ばれる膠着状態に陥った上で、バイデン大統領によるなりふり構わぬ撤退完遂が8月末の期限に先立って進められた。7月初頭に米軍の戦闘部隊の多くが撤退を完了するのと入れ替わりに、地方で根を張っていたターリバーン勢力が一気に台頭し、ひと月余りで地方の全ての国境検問所を押さえて国民と駐在外国人を「袋の鼠」にし、8月15日までの10日ほどで各州の州都を、そして首都カーブルを陥落させた。

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