1966年9月、北京で「毛主席語録」を掲げる紅衛兵ら。文革時代に下放された習近平はそこで党務に就いており、農村で迫害された多くの都市青年とは違う体験を持っている ⓒAFP=時事

 ものごとは全体像をつかむことで正確な対応が可能となる。外交も同じことだ。相手の国、相手の組織、そして交渉相手を徹底的に分析し、相手の正確な全体像をつかむことが、ベストの結果をもたらす。全体像をつかまなければ、成功に導く戦略や戦術は生み出せない。中国とどう付き合うかを考える場合も同じことが当てはまる。だが中国の全体像をつかむことは簡単ではない。中国のすべての面を理解し、それらを有機的、立体的に再構成して、中国はこうであり、だからこうなると結論づけるのは至難の業なのだ。それほど中国は複雑であり、多面的であり、しかも急速に変化している。

 長い間、中国という国と社会を観察してきて、中国の全体像を知る近道は、中国共産党が自分の国の現状をどう理解し、中国をどこに持って行こうとしているかを理解するのが基本だと分かった。なぜなら共産党が一番多くの情報を持ち、それをよく分析し対策を立て、しかも結果を出す力を持っているからだ。改革開放の40有余年の成功は、そのことを示している。こちらが中国の問題に気づいたときには、共産党は大体、その対策まで講じている。 現在、その中国共産党に対し圧倒的影響を及ぼすようになったのが習近平総書記である。毛沢東や鄧小平の時代に近くなってきたということであり、トップの意向とそれを制約する要因分析が中国観察の鍵となる。日本の政治を永田町から観察すると、政治家の個人的な要素の与える影響の大きさが分かる。ましてやトップへの権力集中が強まっている中国だ。人間・習近平への一層の理解がますます重要とならざるを得ない。

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