2020年2月29日、和平合意文書に署名したハリルザド(左)・バラダル(右)両氏が、そのまま米国とタリバンの深い関係を象徴するのか (C) EPA=時事

 アフガニスタンにおけるアメリカ及びその同盟諸国の「敗北」は、今後の国際社会の動向に大きな影響を与える大事件である。その「敗北」の要因も、今後長く検証され続けるだろう。

「アメリカが無知だった」「アメリカが傲慢だった」といった総括の仕方は、必ずしも間違いではないのかもしれないが、単純化しすぎだ。それでは何も言っていないに等しい。少なくとも「それではどうすればよかったのか」という点を考察するのでなければ、検証していることにならない。

「敗北」を受け止めるとは、その原因を真摯に検証することだ。もし「無知で傲慢ではダメだ」といった教訓しか得ようとしないのであれば、今後も「敗北」が繰り返されていくことは不可避だ。

 私自身、当初から、特にボン合意のプロセスが完了した後の2006年以降、アフガニスタンの将来については非常に悲観的な論評書き続けている。だがアメリカ人が無知で傲慢だったからアメリカだけが失敗する、と書いたことは一度もない。アメリカを含めて自由主義諸国の全てが、軍事的、財政的、そして知的な資源のありったけを、20年にわたってアフガニスタンに注いだ。そしてなお、「敗北」を喫したのである。その認識をふまえたうえで、「敗北」の検証をすることが必要だと思う。まずは軍事介入と完全撤退の是非そのものについて考えてみたい。

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