カブール空港周辺の自爆テロ現場を警備するタリバン兵 (C)AFP=時事

 8月26日、カブール空港周辺部で「IS-K(イスラム国ホラサン州)」による自爆テロが行われ、100名以上の犠牲者を出す甚大な被害を引き起こした。

 その際明らかになったのは、日本国内では、アフガニスタンにおける「IS-K」の存在に対する認知が進んでいないことだった。多くの人々が、アフガニスタンに「イスラム国(IS)」系の組織があることすら知らなかった、と述べた。

 実際には「IS-K」は、アフガニスタンの政治情勢に激震を与え、今回のアメリカの完全撤退に至る道程にも大きな影響を与えた存在である。そこで本稿では、過去の「IS-K」の台頭が放った衝撃の意味を捉え直すことを試みる。それによって、アメリカがアフガニスタン政府を見放す政策をとるにいたった経緯を、あらためて確認していくことにする。

至上命題は「民主主義国の建設」それ自体ではなかった

 アメリカは、欧米モデルの民主主義国をアフガニスタンに作り出そうとしてきた、という「神話」がある。だがアメリカは常に自国の安全保障上の利益の確保を至上命題として、アフガニスタンと接してきた。

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