日本農業を殺す「減反選択制」という大愚策

執筆者:一ノ口晴人2009年4月号

消費者のためにも、熱意ある農家のためにもならない「減反」を、今後も続けようと謀る面々。農政は完全に狂っている。「あらゆる角度から検討を急ぐ」 石破茂農林水産相がそう口火を切った昨年末から、官邸主導で農政“改革”が動き出したようにみえる。焦点は、問題の減反政策の見直しだが、実際に行なわれようとしているのは見直しとは名ばかりの「温存」だ。 だが、減反の有名無実化は目前に迫っていた。減反政策を続ける上で不可欠なコメの「公定価格」がつかない事態が起ころうとしていたのである。     * メディアでは「減反(生産調整)」と記されることが多いが、この二つの言葉はまったく異なる意味で使われることもある。 コメに限らずどんな製品でも、供給過剰になれば価格は下がる。需給状況に応じて生産を増減するという意味での「生産調整」をやめることなどできはしない。 それに対して「減反」は、政府が財政資金を使って生産量を調整する「官製カルテル」を指すことが多い。農業経済学者の間では、政府が関与する減反は、大豊作で相場が急落した時などに限ったあくまで緊急避難的な政策であり、経営効率の改善や流通在庫の削減などの構造調整が終わり次第、できるだけ早く停止するのが常識だ。

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