その場しのぎの“泥縄貧乏”が構造的に日本を危機に弱い国にしている(羽田空港で検査の様子を視察する菅義偉首相) ⓒ時事

平時不作為体制が“泥縄貧乏”の危機対応を生む

   菅義偉首相の退陣は、1年前の安倍晋三首相の辞任同様、コロナ危機の下、日本の政治指導者が政府の危機管理体制不全と国民との信頼関係の欠如と自身の肉体的あるいは政治的な極度のストレスを克服できないまま「泥縄」の対応を重ねた挙句、退場を迫られた、すなわち国家的危機における危機管理の失敗の帰結でもある。

   デルタ株のコロナ感染が日本を覆った。この夏、政府は4回目の緊急事態宣言発出を余儀なくされた。ワクチン接種を急ピッチで進めたものの、感染拡大は止まらず、各地で医療ひっ迫が起こった。欧米諸国よりはるかに多い病床数(人口比)を有するにもかかわらず、欧米諸国よりはるかに少ない治療必要患者(同)を病院に入院させることができず、自宅やホテルなどで死亡する例が相次いだ。80%の国民が政府の病床確保策に「不安を感じる」と答えた。菅義偉内閣の支持率は30%を割り込んだ。

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