(東京都の新型コロナワクチン大規模接種センターに向かう自衛官ら) ⓒ時事

国家安全保障リテラシー欠如の歴史的背景

 なぜ、日本では国家安全保障リテラシーが向上しないのか。そこには歴史的かつ構造的な背景がある。①リスクと脅威をありのままに見ることへの社会心理的かつ政治的抵抗感②安全保障政策に対する法律論とイデオロギーの過剰③教育現場において防衛・安全保障テーマを扱うことへの忌避感、などである。

 日本では戦後長い間、国家安全保障は公共空間においてはできれば触れたくない、歓迎されない、そして政治家にとっては票にならないテーマであり続けてきた。戦後、長い間、自衛隊は日陰者扱いにされ、政治家はそれを正面から正そうとはしなかった。それが変わったのは、3・11東日本大震災での自衛隊の住民救出作戦からであり、いまでは自衛隊は国民にとって日本で「もっとも信頼できる公共機関」となったが、いまだに自衛隊の本来任務に関する国民の受け止め方はアンビバレントである。日本では、政府、軍、国民の間の相互の協力関係のあるべき姿が描けていない。

 英国軍の軍・政府・国民の相互協力体制チャートによると、軍は国民に対して〈遂行・奉仕〉で臨み、国民は軍に対して〈尊敬・感謝・連帯〉で接することが期待されている。ここでは、国民が政策を理解し、政策過程に参加することを促すのであれば、政府も同時に、その政策を推進するだけでなくその政策を国民に「説明」しなければならないことが記されている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。