連載小説:裂けた明日 第27回

執筆者:佐々木譲2021年10月30日
写真提供:時事

テントで一晩過ごし、外に出た三人の目に映るのは、かつてとは様変わりした東京湾岸の風景だった。信也は流れた時間の長さと重さを実感する。

[承前]

 信也たちは、朝食をとったあと、かつての東京入管の建物の中で、作業について説明を受け、班に振り分けられてから現場に向かうバスに乗った。由奈は、宿泊所の外にある学校で、夕方まで過ごす。

 信也と真智は、希望を出していたとおり、資源採取班に組み入れられた。ビルの解体現場から出る電子機器類を分解し、基盤やケーブル、金属パーツ類をはぎ取る作業とのことだった。

 田町の作業現場は、ウォーターフロントの広い更地だった。かつてこのあたりに林立していた高層ビル群が、北の攻撃で一瞬にしてすべて崩壊したということはあるまい。ただ、小破したビルもいったんは解体するしかなかったのだ。そのため、広大な更地ができた。しかしそのエリアでは、新しいビルの建設工事は見当たらない。一応更地にはなっているが、新規にビルを建設するには、整地作業はまだ不十分なのだろう。内戦が続いている以上、新しい建設工事にはかかれないというのが実情かもしれない。

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