横須賀に入港中のアメリカ海軍原子力潜水艦 ©U.S.NAVY

 

日本が主導した「QUAD」

 米英豪の3か国による事実上の軍事同盟「AUKUS」が発足した。名指しこそしていないものの、台頭する中国を念頭に、太平洋における西側諸国の軍事的プレゼンスを強化する目的に他ならない。

 しかし、中国に対応するための似たような目的の国際的な枠組みとしては、すでに日米豪印4か国の「QUAD」(日米豪印戦略対話)が存在する。9月24日には菅義偉首相が米ワシントンにて、4か国首脳による初の対面会談に参加したばかりだ。「QUAD」と「AUKUS」を比べると、米国とオーストラリアは共通メンバーで、日本とインドが抜けて英国が加わった形になっている。なぜ米国は、新たな枠組みを必要としたのだろうか。

 今や米国が主導する形となっている「QUAD」の生みの親は、日本の第一次安倍晋三政権だった。2007年、当時の安倍首相が提唱し、米国ブッシュ政権のディック・チェイニー副大統領が賛同した。日本語では日米豪印戦略対話とされているが、英語ではQuadrilateral Security Dialogueであり、本来は「戦略対話」というより「安全保障対話」と訳したほうが正しい。その名の通り、初めは安全保障を軸とした連携だったのである。07年3月に日豪安保共同宣言、翌年10月には日印安保共同宣言が署名された。07年度には、米印海軍が1992年から続けてきた海軍の共同演習『マラバール』に、日本の海上自衛隊とオーストラリアとシンガポール海軍が初めて参加するなど、今に続くQUADの原型が形成された。

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