イスラーム武装勢力が浸透する背景にあるものとは(C)AFP=時事

 

 筆者の手元に、色褪せた古い旅行ガイドブックがある。1990年3月1日発行の『地球の歩き方 FRONTIER 西アフリカ』(ダイヤモンド社)。対象としているのは、西アフリカの乾燥帯サヘルに位置するマリ、ブルキナファソ、ニジェールなど7カ国だ。30年前、大学生だった筆者はこの本を手に、初めてアフリカを旅した。当時のサヘルの国々は、バブルの日本で平和ボケした大学生が旅行できるほど治安が良く、だからこそ、こうしたガイドブックが発行されていたのである。

 それから30年。日本外務省は現在、ブルキナファソの北部と東部、マリとニジェールの8割以上の地域をレベル4の「退避勧告」地域に指定している。この3カ国は、もはや安心して旅行が楽しめる状態ではなく、同書は廃版になっている。

 2001年の9.11を機に始まった米国主導の対テロ戦争によって、世界は以前よりも安全になったのか。答えを出すことは簡単ではないが、世界には過去20年間にイスラーム武装勢力によるテロの脅威が増したことによって、明らかに治安が悪化した地域がある。西アフリカのサヘルはその典型だろう。

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