公平な社会を実現するための「新しい社会契約」とは何か

Minouche Shafik『What We Owe Each Other: A New Social Contract』

執筆者:植田かもめ2021年10月17日
 

  私たちの社会は、正しく機能しているだろうか。もしかして知らず知らずのうちに、壊れていないだろうか。本書『What We Owe Each Other』(2021年3月発売)が紹介するある調査によれば、米国・ヨーロッパ・中国・インドや多数の途上国において、5人中4人が「社会システムは自分たちにとって正しく機能していない」と考えているという。

 本書の著者であるミノーシュ・シャフィクは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの現任のディレクター(学長)である経済学者だ。エジプトに生まれて幼少期に米国へと移住した彼女は、史上最年少の36歳で世界銀行の副総裁に就任し、国際通貨基金(IMF)の副専務理事などを歴任した経歴を持つ。

 本書は、「社会契約」(the social contract)という軸を使って、教育・保健・労働・高齢化・環境などについて包括的に論じた一冊だ。フィナンシャル・タイムズ紙とコンサルティング会社のマッキンゼーが毎年選出している「ベスト・ビジネス・ブックス」の2021年版ロングリスト(第一次候補)にも選ばれている。

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