戦略的意図をもって余力を維持するプレイヤーの力がタイトな市場を左右する(2020年1月、ガスパイプライン「トルコストリーム」の開通式に出席したプーチン露大統領[左]。右はトルコのエルドアン大統領) ⓒAFP=時事

   エネルギー価格高騰が世界の注目を集めている。原油価格は2021年10月にはブレント・WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)共に80ドルの大台を突破し、10月下旬にはブレントは80ドル台後半まで上昇した。原油価格の上昇は世界経済の先行きへの警戒感も生み出している。この背景には基本的には石油需給のタイト化がある。2020年のコロナ禍による需要蒸発から世界経済が回復・需要拡大基調にある中、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどからなる産油国グループ、OPECプラスが協調減産を持続し、石油在庫は大きく低下してきた。8月末のハリケーンにより米国石油生産が低下したことも価格上昇を加速した。さらに、OPECプラスが油価上昇にどう対応するか世界が注目したが、彼らが増産拡大を見送ったことで、10月に一気に80ドル突破をもたらした。

各エネルギー市場には「固有の背景」

   価格上昇・高騰は原油だけはでない。LNG(液化天然ガス)は原油以上に激しい価格上昇がスポット取引で見られている。LNG市場では、中国のLNG爆食が続き、本年には中国は日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になる。中国も含みアジア全体でもLNG需要が伸びており、需要増に対して、LNG市場では追加供給能力が限られている。そのため需給が急速にタイト化、それを反映するスポット価格は先行きのさらなる逼迫を織り込む思惑も影響し、100万BTU(英国熱量単位)当たりで、10月には50ドルを大幅に超える超高値を付ける取引も出た、と言われている。LNG50ドルは、熱量換算して原油価格で見ると1バレル300ドルに相当する。まさに異常な超高値である。なお、アジアのLNG供給はほとんどが長期契約に基づいており、その価格は原油価格に連動して決まる。長期契約が主体である日本のLNG輸入の9月平均価格は約11ドルであり、スポット価格ほどの高騰にはなっていない。しかし、今後、原油価格の高騰を受けて、これからLNG調達コストは着実に全体として上昇する。

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