アン君の配達は決して“遅く”なかった 写真提供:筆者(以下も)

「相思相愛」の強調で隠される「闇」

〈新聞配達でつながったベトナムと日本の絆 いま新型コロナで正念場〉

 そんなタイトルの記事が7月6日、『朝日新聞GLOBE+』に載った。朝日新聞販売所で働くベトナム人の新聞奨学生を取り上げた記事である。

 もともと新聞奨学生は日本人の若者を対象とする制度だが、『朝日』はベトナム人など外国人にも門戸を開いている。記事によれば、『朝日』の販売所はコロナ禍の前、ベトナム人だけで年約300人の奨学生を受け入れていたという。ベトナム人奨学生による新聞配達は、東京都内だけで〈約20万世帯〉に上っている。

 都市部の販売所では人手不足が著しい。〈20万世帯〉という数字が示す通り、ベトナム人奨学生は『朝日』販売所にとって欠かせない労働力だ。そんなベトナム人奨学生が新型コロナの影響で来日できなくなり、販売所は彼らのありがたさを再認識した、というのが記事の趣旨である。

 記事では、販売所とベトナム人奨学生の相思相愛ぶりが強調されている。読者も〈ベトナムと日本の絆〉となる良い制度だと印象を持ったに違いない。

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