11月5日に行われた選挙結果への抗議デモ(C)AFP=時事

 

 米国が2003年開戦のイラク戦争でサダム・フセイン独裁政権を倒したイラクで10月10日、民主化以来5回目となる議会選挙が実施された。政治腐敗や高い失業率に怒る若者たちによる19 年秋の抗議デモをきっかけに、約半年前倒しとなった今回の選挙では、この国の複雑な構造が改めて浮かび上がった。

 愛国路線を掲げるイスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師率いる政党連合が大勝し、今後のイラクはどう変化していくのか。

 選挙前後に現地を取材した筆者が報告する。

戦闘機まで飛ぶ投票日の対テロ警備

 ゴオオオ、コオオオ――。快晴となった投票日の朝、首都バグダッド上空にはイラク軍の戦闘機が警戒飛行していた。投票所となっている中心部の学校を訪ねると、手前の道路は有刺鉄線で封鎖され、自動小銃を持った治安部隊が展開している。中に入るには簡単な身体検査も必要だった。いずれも選挙を狙ったテロを防ぐための保安措置だ。

 バグダッドでは今年に入ってからも、過激派組織「イスラム国」(IS)による自爆テロが1月と7月に計2件発生し、それぞれ数十人が死亡した。15年ごろにイラクとシリアを席巻したISは17年末には駆逐されたが、残党は少なからず存在している。日本人の目からは過剰に見える警備がこの国では必要不可欠なのだ。

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