連載小説:裂けた明日 第32回

執筆者:佐々木譲2021年12月4日
写真提供:時事

真智を支援してくれるはずだった東京の仲間の元にはスパイが潜んでいた。連絡を取り合ってきた三杉は、もう一度会いたいと言ってくるが……。

[承前]

 昼食を食べ終えると、まだ午後の作業まで時間があった。

 児玉は弁当ガラを回収場に運んでゆき、そのまま戻ってこなかった。信也たちも昼食を終えると、プレハブの食堂を出て、作業場に戻った。

 作業場のベンチに腰を下ろしたところで、真智がスマホを見て言った。

「また三杉さんです。そろそろ返事をしなければ」

 信也は訊いた。

「自分の安全については、どう書いている?」

「とくに何も」

「三杉さん自身には、目に見えるような危険は迫っていないということかな。自分に尾行がついているとわかっていれば、早く会いたいとは書いてこないんじゃないか。あるいは、ここなら安全という場所へ来るよう指示がある」

「どうしましょう」

「共同統治地域の中の事情が全然わからない。今夜、作業が終わったら、わたしはランデブーに使える場所を探しに行ってみる。三杉さんに会うのは明日以降だ」

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