連載小説:裂けた明日 第33回

執筆者:佐々木譲2021年12月11日
写真提供:時事(米空軍ホームページより)

三杉と銀座駅で落ち合うことになるが、尾行がついている可能性も否定できず、不測の事態にも備えることにした三人。彼らを待つのは――。

[承前]

 ニュースはさらに報じている。国民融和政府側のいくつかの都市では、昨夜また爆破事件があった。川崎で二件、横須賀、千葉、高崎でも一件ずつ。自爆攻撃だけではなく、時限爆弾を使ったものも一件あったという。死傷者の数は、四十人以上。すでに軍事境界線の南側でも戦闘が起こっているようなものだった。

 ニュースのあと、作業員やその家族たちがチャンネルを別の放送局に短く切り換えていった。境界線の南ではテレビ局も複数あって、放送の内容も豊富だった。外国事情についての番組が多いと感じたが、それらは平和維持軍や国連が提供しているもののようだった。もちろん海外のニュースも多い。芸人のトークショーもある。チャンネルを変えられる途中でちらりと見た芸人は、大阪弁で駐留高麗連邦軍の女性広報将校が美人だと讃えていた。彼は開戦前は、高麗連邦のスポーツマンや芸能人を汚い言葉でけなすことで受けていたのではなかったか。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。