裂けた明日
裂けた明日 (33)

連載小説:裂けた明日 第33回

執筆者:佐々木譲 2021年12月11日
タグ: 日本
エリア: その他
写真提供:時事(米空軍ホームページより)
内戦により、分断された日本。相次ぐ震災と原発事故、そして例の病気の蔓延で、国民の生活は壊滅的な影響を受けていた。家族を亡くし一人暮らす男の元へ、逃亡者が現れる――。<作家の眼が、現実を鋭く照射する。近未来の分断日本を描く、スリリングなSF長篇>

三杉と銀座駅で落ち合うことになるが、尾行がついている可能性も否定できず、不測の事態にも備えることにした三人。彼らを待つのは――。

[承前]

 ニュースはさらに報じている。国民融和政府側のいくつかの都市では、昨夜また爆破事件があった。川崎で二件、横須賀、千葉、高崎でも一件ずつ。自爆攻撃だけではなく、時限爆弾を使ったものも一件あったという。死傷者の数は、四十人以上。すでに軍事境界線の南側でも戦闘が起こっているようなものだった。

 ニュースのあと、作業員やその家族たちがチャンネルを別の放送局に短く切り換えていった。境界線の南ではテレビ局も複数あって、放送の内容も豊富だった。外国事情についての番組が多いと感じたが、それらは平和維持軍や国連が提供しているもののようだった。もちろん海外のニュースも多い。芸人のトークショーもある。チャンネルを変えられる途中でちらりと見た芸人は、大阪弁で駐留高麗連邦軍の女性広報将校が美人だと讃えていた。彼は開戦前は、高麗連邦のスポーツマンや芸能人を汚い言葉でけなすことで受けていたのではなかったか。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
佐々木譲 [ささき・じょう] 1950(昭和25)年、北海道生れ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。1990(平成2)年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2010年、『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『天下城』『笑う警官』『警官の血』『地層捜査』『沈黙法廷』『抵抗都市』『図書館の子』『降るがいい』『雪に撃つ』『帝国の弔砲』などがある。
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