筆者が通う「デイ・マート」撮影:飯島健太 ©朝日新聞社

 

過大要求をつきつけるライシ政権

 イランの首都テヘランに赴任してちょうど1年が過ぎた。筆者の自宅近くのスーパー「デイ・マート」には店先に小さなテラス席があり、コーヒーや軽食を楽しめる。11月に入って稼働した軒先の屋外ヒーターが、冬の訪れを告げる。

 この1年、デイ・マートで買い物するたびに、レシートをノートに貼ってきたが、それを見返すまでもなく日頃から肌で感じるのが、物価の高騰である。牛乳やバター、パン、果汁100%のオレンジジュース、炭酸水、鶏肉、卵という日常的に買う食料品の値段は概ね1.5~2倍になった。

 イラン政府が物価高騰の原因として真っ先に挙げるのが、米国による経済制裁である。ドナルド・トランプ前政権が2018年5月、核合意から一方的に離脱し、対イラン制裁を再開・強化した。

 制裁が始まると、多くの企業や国は米国による多額の「罰金」を恐れ、イランと取引することを打ち切った。その結果、イランは財政の柱だった原油の収入を失う大きな痛手を負い、輸入品が滞った。

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