「政治」に屈したモディ政権の農業改革 零細農民の声は届いたのか
2021年12月10日
猛反発したMSPの既得権益層
農産物流通の自由化・合理化を目指す新農業法は、農産物流通促進法など3つの新法からなる。これによって、これまで「マンディ」と呼ばれる地元の公設市場への農産物販売を事実上義務付けられていた農民は、州外の市場やスーパー、商社などの民間企業に自由に作物を出荷できるようになるはずだった。農民の無知につけ込んで作物を買いたたく悪質仲買人を排除し、食品メーカーなどとの契約栽培を促進するなど、多くのメリットが期待されていた。
だが、パンジャブ州やデリー郊外・ハリヤナ州などの比較的大規模かつ裕福な農民らは、これに真っ向から反対。デリー・ハリヤナ州境などで座り込みを展開し、警官隊との衝突で数十人の死者を出すなど深刻な対立に発展した。
抗議行動に参加していた農民の多くは、最低支持価格(MSP)による政府の農産物買い上げ制度の恩恵を受けてきた「既得権益層」だ。政府は MSPは廃止しないと説明したが、これを全く信用しない農民らには疑心暗鬼が広がり、彼らの行動を先鋭化させた。
ビジネスライン紙によると2017年度、政府はMSP制度が最もよく機能している北・中部5州(パンジャブ、ウッタルプラデシュ、ハリヤナ、マドヤプラデシュ、ラジャスタン)から約3080万トンの小麦を買い上げたが、これは国全体の調達量の99%以上。コメの買い上げ量も、この5州で全体の40%以上を占めた。
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