「政治的価値観」にすがるアメリカ市民、その孤独と不安の湧き出た場所

執筆者:ブルース・ストークス(Bruce Stokes)2021年12月10日
米連邦議会議事堂に乱入したトランプ支持者たち(2021年1月6日) ⓒAFP=時事

 今から半世紀以上前の1950年のこと、ドイツに生まれ、のちにアメリカに渡った発達心理学者エリク・エリクソン(1902-94)は次のように述べた。「常に変動するこの国では、国民たちが一生涯や一世代のなかで他の大国よりも急激な〈変化〉にさらされる」。

 そのとき以来、アメリカの人々は、人口構成の変化や社会・経済の構造変化に拍車がかかる状況を目の当たりにしている。そしてそれは、この国の民主主義や同盟国としてのアメリカの信頼性を揺るがすものとなっている。

アイデンティティーの柱が揺らいでいる。たとえば、“男らしさ”

 この半世紀で、アメリカにおける非白人の割合は3倍に伸びた。外国生まれの人の割合も約3倍になっている。また「未婚の母」による出生率は5倍近くに、シングルマザー家庭の子どもの割合もほぼ2倍となっている。

 いっぽうで、キリスト教会などの宗教組織に所属するいわゆる「教会員」は3割ほど減り(最新の調査では成人全体の50%を切っている)、製造業で働く人の割合も3分の1に減っている。この間、平均所得はそんなに変わらず頭打ち状態であるが。

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