2021年の中東の環境・エネルギー問題を、後の時代に振り返るなら、サウジアラビアのアブドルアジーズ・ビン・サルマーン石油相(サルマーン国王の子)が6月1日に行った「ネット・ゼロ計画はラ・ラ・ランドだ」という発言が、この年の奇妙な状況を俯瞰する象徴的なものとして、思い出される事になるかもしれない。

 6月1日のアブドルアジーズ石油相の発言は、石油消費国の作る国際機関である国際エネルギー機関(IEA)が5月18日に出した、「ネット・ゼロ」目標達成のために石油消費国の政府が取り組むべき課題についての大部の報告書『2050年までのネット・ゼロ:グローバルなエネルギー・セクターのための工程表』に対するコメントを求められた際に飛び出したものだ。「産油国の側の本音が思わず漏れた」ものと言えるだろう。

「(IEAのネット・ゼロ工程表を)真剣に受け取る必要があるのか?   そんなものは『ラ・ラ・ランド』の続編だ」というのがアブドルアジーズ石油相の発言の骨子のようだ。これは欧米や英語圏ではかなり論及の的となったが、日本ではあまり理解されていないようだ。

『ラ・ラ・ランド』というのは、2016年に公開された、米国のミュージカル映画で、各国で評価も高く、全世界で4億4600万ドルの興行収入を得た大ヒット作である。

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