2021年の中東を記録する時に、イランで保守強硬派のエブラーヒーム・ライースィーが大統領に当選・就任した点を書き漏らすわけにはいかないだろう。ライースィー大統領就任が、イラン政治と政治史においてどのように描かれることになるか、いわばどのように「記憶」されるかは、まだ分からない。それはライースィー大統領率いる政府の今後の統治に、さらにはイランの体制の今後の展開にかかっている。

 言い換えれば、ライースィー大統領が、「最高指導者ライースィー師」になれるか否かが、ライースィー政権の隠れた最大の課題であると言ってもいい。

低投票率に終わったイラン大統領選挙

 6月18日に行われた第13期のイラン大統領選挙の投票で、ライースィー候補は約61.9%の得票率で、決選投票を待たず、第8代大統領への当選を果たした。注目された投票率は48.8%と、過去最低を記録した。

 選挙を監督する護憲評議会が、事前審査で、改革派・穏健派のみならず保守派も含めて、有力候補を軒並み失格として、立候補を許さなかったため、無風の選挙であり、実質的には、体制側の推す、司法府長官のライースィー候補への信任投票といってもよかった。そのため、投票率が、候補者というよりは体制に対する国民の支持の度合いを図るメルクマールとなるとも考えられていた。投票率が「過半数割れ」というのは、得票率でライースィー候補が圧倒しても拭い去れない、国民の無言の「評決」である。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。