「アラブの春」による政権への批判に対して、政権が軍事力による封殺という手段で対峙したシリアでは、10年に及ぶ陰惨な内戦が続いてきた。シリア内戦には、イランがアサド政権を支援して介入し、レバノンのヒズブッラーも駆使して、影響力を強めている。これに対して、トルコは北部の反体制勢力への支援や北東部への進駐によって独自の影響圏・支配領域を広げた。そして、サウジやカタールも、それぞれの息のかかった反体制勢力を支援して、イランが支援するアサド政権と対立してきた。

   アサド政権による反体制派の苛烈な弾圧に対しては、欧米諸国がこれを非難し外交関係を絶ったが、サウジ等の親米陣営の諸国も対アサド政権の断交を行ってきた。これはシリアの民主化を支援し人権侵害を批判するためというよりは、イランに支援された反米陣営のアサド政権との関係を絶ったという性質の色濃い動きである。アサド政権は「アラブの春」の混乱と内戦勃発以来、サウジなどが主導する、アラブ連盟などの地域・民族的枠組みから排除されてきた。

 しかし2021年を通じて、アサド政権との外交関係を各国が取り戻しつつあり、近い将来に、アラブ連盟の加盟国資格停止も解かれ、アサド大統領が国際舞台に戻ってくるとみられている。

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