連載小説:裂けた明日 第36回
2022年1月8日

写真提供:時事通信フォト
尾行者から逃げる途中、信也は真智と離れて行動することになってしまう。由奈と二人、非常時のための待ち合わせ場所に辿り着くが……。
[承前]
ぐるりと東京駅前の広場を見回したときだ。
何かが爆ぜる音が連続した。細かく、甲高い音だ。悲鳴が上がった。
悲鳴は、東京駅の丸の内中央口からも聞こえてきた。利用客が飛び出してくる。爆ぜる音は続かなかった。突撃銃の発射音だったのかもしれない。撃ち合いがあった? それも、二秒にも満たない時間。複数の銃の数連射程度の銃撃戦だったようだ。
駅舎の外に出てきた利用客たちは、広場に散った。広場を駆け抜けようとする男女もいる。すぐに、避難してくる利用客は続かなくなった。
広場の皇居側を警戒していた兵士たちも、銃を持ち直し、駅舎の方向に身体を向けている。しかし車の通行を停めてはいない。
銃声ではなかったのだろうか。それとも、いまの程度の銃声ならば、その音のする方へ駆けたり、身体を隠したりするほどのことはないということか。じっさい、駅舎を飛び出てきたひとの様子を見ている限り、駅舎の中でパニックが起こっているようではなかった。
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