裂けた明日 (36)

連載小説:裂けた明日 第36回

執筆者:佐々木譲 2022年1月8日
タグ: 日本
エリア: その他
写真提供:時事通信フォト
内戦により、分断された日本。相次ぐ震災と原発事故、そして例の病気の蔓延で、国民の生活は壊滅的な影響を受けていた。家族を亡くし一人暮らす男の元へ、逃亡者が現れる――。<作家の眼が、現実を鋭く照射する。近未来の分断日本を描く、スリリングなSF長篇>

尾行者から逃げる途中、信也は真智と離れて行動することになってしまう。由奈と二人、非常時のための待ち合わせ場所に辿り着くが……。

[承前]

 ぐるりと東京駅前の広場を見回したときだ。

 何かが爆ぜる音が連続した。細かく、甲高い音だ。悲鳴が上がった。

 悲鳴は、東京駅の丸の内中央口からも聞こえてきた。利用客が飛び出してくる。爆ぜる音は続かなかった。突撃銃の発射音だったのかもしれない。撃ち合いがあった? それも、二秒にも満たない時間。複数の銃の数連射程度の銃撃戦だったようだ。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
佐々木譲(ささきじょう) [ささき・じょう] 1950(昭和25)年、北海道生れ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。1990(平成2)年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2010年、『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『天下城』『笑う警官』『警官の血』『地層捜査』『沈黙法廷』『抵抗都市』『図書館の子』『降るがいい』『雪に撃つ』『帝国の弔砲』などがある。
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