連載小説:裂けた明日 第37回

執筆者:佐々木譲2022年1月15日
写真提供:EPA=時事

約束通り現れた真智と合流することができ、胸を撫で下ろした信也。しかし、刻一刻と変わる国内情勢が三人の未来にも暗い影を落とす。

[承前]

 信也はコンコースの右側、東京湾側に目を向けた。駅前に、ネットカフェの看板があったはずだ。

 信也は真智に言った。

「最新のニュースを知りたい。ネットカフェに行こう」

 真智も、その理由をすぐに察したようだった。

「わたしも、パソコンを使いたくなってきたところでした」

 信也たちは東口へと出ると、駅前のロータリーに近い古いビルにあるネットカフェに入った。

 信也はろくに利用したこともないので、料金もシステムも知らなかった。受付でまごつきながら手続きし、三人で二階のデスクトップPCが並ぶフロアの奥へと入った。ほぼ満席だった。作業服姿の男、カジュアルな服装の女性たち、学生っぽい若い男女それに少数のホワイトカラーが、PCのモニターを真剣に見つめている。ゲームを楽しみにきているという様子ではなかった。信也は真智と由奈とは別の通路に、席を取ることができた。

 まず、かつての大新聞のサイトに入った。全国紙はどれもそうだが、開戦前はさんざんに戦争を煽り、連合国に降伏した後はてのひらを返して平和と国際友好を謳い出した。これらの新聞は、平和維持軍の進駐をまるでオリンピック選手団を迎えるように歓迎したのだった。その論調を、信也は覚えている。

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