裂けた明日 (37)

連載小説:裂けた明日 第37回

執筆者:佐々木譲 2022年1月15日
タグ: 日本
エリア: その他
写真提供:EPA=時事
内戦により、分断された日本。相次ぐ震災と原発事故、そして例の病気の蔓延で、国民の生活は壊滅的な影響を受けていた。家族を亡くし一人暮らす男の元へ、逃亡者が現れる――。<作家の眼が、現実を鋭く照射する。近未来の分断日本を描く、スリリングなSF長篇>

約束通り現れた真智と合流することができ、胸を撫で下ろした信也。しかし、刻一刻と変わる国内情勢が三人の未来にも暗い影を落とす。

[承前]

 信也はコンコースの右側、東京湾側に目を向けた。駅前に、ネットカフェの看板があったはずだ。

 信也は真智に言った。

「最新のニュースを知りたい。ネットカフェに行こう」

 真智も、その理由をすぐに察したようだった。

「わたしも、パソコンを使いたくなってきたところでした」

 信也たちは東口へと出ると、駅前のロータリーに近い古いビルにあるネットカフェに入った。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
佐々木譲(ささきじょう) [ささき・じょう] 1950(昭和25)年、北海道生れ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。1990(平成2)年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2010年、『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『天下城』『笑う警官』『警官の血』『地層捜査』『沈黙法廷』『抵抗都市』『図書館の子』『降るがいい』『雪に撃つ』『帝国の弔砲』などがある。
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