*当日の講演内容をもとに編集・再構成を加えてあります。

西村博一:編集長の西村です。本日の「新潮講座×フォーサイトセミナー」は、元陸上幕僚長の岩田清文さんをお招きして「台湾有事の可能性と日本の課題」についてお話をお聞かせいただきます。

「韜光養晦」から「中華民族の偉大な復興」への転換

岩田清文: 最初に申し上げたいのは、「中国はもはや脅威になっている」という認識を抱くべきだということです。

 今年の『防衛白書』にも、中国について「懸念」という表現はありましたが、「脅威」という文字はありません。政治的事情、中国との関係でそうせざるを得ない一面もあるとは思いますが、状況を国民に明確に伝えたうえで日本政府の方針を決めるべき時期に来ていると思っています。

「脅威」という認識において、「意図」と「能力」という視点で見る。今で言えば習近平の意図、それから中国に攻撃能力がどこまであるか、という観点で見なければいけない。

 歴史的なところも踏まえて、少しこの観点についてお話しします。

 鄧小平の時代は、「韜光養晦(とうこうようかい)」という言葉がありました。爪を隠してしっかりと力を蓄え、いよいよ力がついてきた時に外に出ていこう、という外交方針を打ち立てた。巧みにアメリカを取り込み、日本からODA(政府開発援助)をしっかり取りながら、力を蓄えてきた。

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