近代的世界は、3つのシステムが相互補完的な関係を結ぶことによって生まれたといってもよい。「国民国家」「市民社会」「資本主義」というシステムである。

 国民国家は、それまでは地域共同体や職人共同体などに属して暮らしていた人間を、国民という個人に分解し、その国民を国家が一元管理するかたちとしてつくりだされた。

 日本をみても、江戸時代までの人々に“日本人”という意識はなく、たとえば“津軽の○○村の人”や“薩摩の○○村の人”であったのが、明治になると日本人がつくられ、日本国民を国家が一元管理するかたちが生まれたように、である。

 この国民国家と市民社会、資本主義は親和性が高かった。なぜならそれらは、いずれもが個人を基盤においたシステムだったからである。

 国民国家は国民という個人を基盤にして形成されている。市民社会は市民という個人を基礎においた社会システムである。そして資本主義は人間が個人になったからこそ働き、市場を用いた消費に誘導されるかたちで生まれている。そのどれもが、基礎にあるのは個人なのである。だからこの3つのシステムは相互補完的に調和することができた。

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